勝手にそんな文脈を読み込むな!<行政書士ってナニ? 言語分析篇>「意味」と「意図」1(文脈)

RIE
近々、18歳から成人になるようですね。

真栄里
2022年年4月1日からな。
RIE
お酒も18歳から飲めますか?
真栄里
飲めないな。
RIE
成人なのに?
真栄里
民法4条で成年は「十八歳」となるが、飲酒については20歳にならないとダメだ。喫煙もな。
RIE
ややこしくなりますねぇ…
これまでは20歳という一律の基準だったのに。
真栄里
そこが問題ではあるよな。
一律的判断のわかりやすさが著しく損なわれてしまった…
まぁ決まってしまったことなので守っていくしかないんだが。
ちなみに、「未成年者飲酒禁止法」という法律があるんだが、知ってるか?
RIE
わかりません。
そんな法律があったんですね。
真栄里
その法律の名称も変わる。
RIE
成年年齢が18歳になることによって?
変える必要はないような気がするんですけど?
その法律の「未成年」は改正後も20歳未満ということなんでしょうから。
真栄里
理屈はそうなんだが、民法の成年が18歳に変わることで、「未成年者飲酒禁止法」の「未成年者」も18歳未満と受け取られるとマズイから法律の名称を変えるんだろう。
RIE
どう変わるんですか?
”20歳未満の人の飲酒を禁じます法”?
真栄里
まぁ、そんなもの。
正式には、
「二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止二関スル法律」
となる。
RIE
カタカナ?
真栄里
原文がカタカナなんだよ。
なにせ、大正11年制定の法律だからな。
RIE
大正11年??
憲法制定よりもだいぶ前ですけど?
真栄里
そうだな。
憲法に反する内容でなければ、旧憲法時代に制定された法律であっても有効だからな。
RIE
あー、なるほど。
でもカタカナは変えたらいいのに。
読みにくいし。
真栄里
カタカナ以外は読める的な発言だな(笑)
RIE
バカにしないでください!
読めます。
真栄里
まじで?
凄いな!
俺にはできん。
RIE
なんで?
先生は日本語わからないんですか?
真栄里
わかるよ!
そうじゃなく、俺はさっき、「カタカナ以外は読める的な発言だな」と言ったんだ。
RIE
知ってます。
それがなにか?
真栄里
世界にはカタカナ以外の言語がどれだけあるか知ってるのか?
7,000近くの言語があるんだぞ?
だから、「バカにしないでください!読めます。」という発言は、カタカナ以外のそれらの言語も読めるっていう答えになっているぞ。
RIE
はぁ〜〜〜〜???
何言ってるんですか?
文脈からして「カタカナ以外」と言ったらカタカナ以外の日本語のことでしょうが!
真栄里
勝手にそんな文脈を読み込むな!
論理的に日本語に絞った表現を俺はしてないぞ!
RIE
言葉を扱う街の法律家として、
言葉を扱う翻訳者としてなにを言ってるんですか?
真栄里
街の法律家も翻訳者も、まずは言語の論理を大切にしないといけないと言っているんだよ。
文脈が自分の思い込みだったらどうなる?
RIE
話が食い違っていくでしょうね。
真栄里
そうだ。
言語学では、「意味」と「意図」は別物として扱われている。
簡単に言えば、

「意味」とは、文が表す文字通り、辞書通りの内容
「意図」とは、その文で相手に伝えたい内容

RIE
同じじゃないんですか?
真栄里
厳密には違う。
同じになる場合ももちろんあるがな。
たとえば、

A:「明日、海でビーチパーティするんだけど、来る?」
B:「明日は美容室を予約しているんだよね。」

と答えた場合、BはAのお誘いに応じているのか?

RIE
Bは断っていると思いますよ。
真栄里
なんでよ。
Bは来る、来ないに答えていないよ?
言葉の「意味」としては、明日の予定を伝えているだけ!
RIE
そうですけど、はっきりと断れないから、ビーチパーティと重なる予定があるという事実を伝えることで、Aのお誘いをBはやんわりと断っているんですよ。
真栄里
まぁ、多くの場合はそうだろうな。
ということは、Bの発言の「意図」はAのお誘いを断るということにあるわけだ。
Aはその意図を察知したなら、次のようにいうだろうな。

A:わかったー。今度予定が合う時にビーチパーティしようねぇ。

RIE
通常はそうなるでしょうね。
真栄里
逆に、AがBの意図を察知できずにBの発言を「意味」どおりに受け取ったら、次のようにAは言うだろうな。

A:何時から?ビーチパーティは夕方の5時からだから重ならないはずよ〜。

RIE
でしょうね。
だからこそ、言葉が発言された状況などの文脈が大切なんですよ。
文脈を無視した発言はダメです。
真栄里
日常生活では、状況を含めた「言語外文脈」(野間秀樹「言語存在論」)が極めて重要な役割を担っていることは俺もよくわかっている。
だが、法律においては言語外文脈をはじめから重視するわけにはいかない。
言葉の「意味」と「意図」とを厳密に対応させる表現をしないといけない。
そうしないと法律を読んだ国民に立法者の正しい意図が伝わらないからな。
RIE
なるほど。
そういうことなんですね。先生が言いたかったのは。
ん?
でも、法律には解釈があるじゃないですか。
解釈の際、法律の文言だけじゃなく、法律には明言されていない法の趣旨とかに基づいてある結論を導くでしょ?
そうであれば、法律だって、言語外の文脈を重視してますよね?
先生が言っていることが全て正しいというわけではないでしょ?( ̄^ ̄) ドヤッ!
真栄里
何ドヤ顔してんだよ。

---次話へ続く---

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