遺産の直接帰属<行政書士ってナニ? 遺産分割協議書翻訳編>inherit
前回の記事はこちらです。
上辺の日本語<行政書士ってナニ? 遺産分割協議書翻訳編>全不動産を”取得する”
民法909条本文だ。
(遺産の分割の効力)
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし…
たとえば、被相続人のお父さん(甲)が亡くなって子供3人(Aら)が相続した場合に、甲が亡くなってから1年後に遺産分割協議が整うってこともありますよね。
相続開始から1年後に遺産分割協議がなされるってことです。
10年以上たってから遺産分割協議をするということもあるし。
ともかく、相続開始時(甲の死亡時)とAらの遺産分割協議の日が違うわけだから遺産分割協議で遺産がAらの間で移転したと考えるのが普通でしょ?
民法898条です。
(共同相続の効力)
相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
ってことは、共有物の分割ということになるはずでしょ?
共有物の分割は分割時に所有権が移るでしょ?
そうしたら共有している遺産を分割した時に遺産の所有権も移転するとなるはずでしょ〜〜。
相続においては、相続財産は相続開始時に直ちに相続人に移転するという当然承継主義が採用されているんだよ。
民法896条だ。
(相続の一般的効力)
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし…。
相続の一般的効力に合わせるような形で、遺産分割協議においても相続開始の時にさかのぼって分割協議どおりに遺産が相続された、とみるわけだ。
法的には、相続開始時に直接被相続人から分割された遺産を相続人が承継した(遺産の直接帰属)ということにするために遡及効を導入している。
めんどくさい議論をしますねぇ。
こんなことをしているから法律って嫌われるんですよ!
論理的一貫性は法律が備えなければならない性質の一つなんだから。
近くにいたら嫌ですね。
まぁ、評価はやめておきましょう。
で、この遺産分割協議の法的性質、遺産の直接帰属、というのが翻訳に影響するわけですね。
法的には、遺産分割協議による遺産の取得は、遺産の直接帰属というわけだから、相続人は遺産を相続によって取得したということになるんだ。
ということは、
get
acquire
obtain
purchase
はいずれも適切じゃない。
相続による取得というわけだから、
inherit(<財産>を相続する)
が最適となる。
なんか深いですね。
たった二語の「取得」に、
・遺産分割の効力(民法909条本文)、
・共同相続の効力(民法898条)と
・相続の一般的効力(民法896条)
の理解が必要になるんですねぇ。
縦を横にする
横を縦にする
という単純な作業ではないんだ、翻訳って。
極めて専門的な行為なんだよ。
だからこそ翻訳者も専門分野ごとに分かれているんだ。
専門分野も機械翻訳で精度95%とか謳う宣伝があるが、あれはまったく当てにならない。
そもそもその専門分野の文書全てを精度95%で翻訳する保証がない(実際に試してみたから間違いない)し、原文と訳文が合っているかを誰が判断するのか?という重要な問題がある。英語がわかりその専門分野の知識がある人であれば判断できるだろうが、そうじゃない人は機械翻訳の正確性を自分では判断できないだろ?
それに、残り5%の精度次第では、全体の文の論旨に大きな影響を及ぼすこともある。
95%の正確性も怪しい上に、残り5%の誤訳によっては論旨全体が真逆になったりする(否定を肯定にするなど)。
機械翻訳というのは、機械翻訳を使う人を選ぶんだよ。
マニュアル車がマニュアルを運転できる人を選ぶみたいなものですね?
本焼きの蛸引包丁が料理人を選ぶみたいなものだな。
使いこなせる腕がない人は本焼き包丁を使いこなせないからな。
こういう表現は”物が人を選ぶ”という構造で使うものだ。
俺を物扱いするな(怒)
結婚とかそうでしょ?
人が人を人生の伴侶として選ぶわけですから。
今まで”物が人を選ぶ”という文脈で話をしていたんだから。
機械翻訳みたいに文脈度外視か!
今、文脈をRIEが変えたんです!!
よろしくお願いします。
RIEはいつでも準備できていますので^^
---終---
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沖縄在住の特定行政書士、真栄里です。
特定行政書士や行政書士の仕事について少しでも多くの方に理解していただきたく、下記のブログに参加しております。
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