債務者の帰責性はなくても債務不履行解除が可能<行政書士ってナニ?(NEW) 債権法改正編>5

RIE
我妻先生は置いといて。
真栄里
法定解除をするには不履行者に帰責性が必要か?

RIE
債務者に帰責性がないと債務不履行解除はできませんよね。
真栄里
これまではな。
2020年の4月1日からは債務者の帰責性はなくても債務不履行解除が可能となる。
RIE
それはまた思い切った改正ですね。
でもどうして?
真栄里
そもそも、何故債務不履行解除で債務者の帰責性が必要だったんだ?
RIE
さぁ、わかりません。
真栄里
我妻先生に代表される伝統的な立場は…
RIE
出た、我妻先生。
真栄里
しょうがないだろうが。
我妻先生のような伝統的な立場は、債務不履行に基づく契約解除を債務者に対する責任追及のための手段と捉えていたんだよ。
不法行為の被害者が加害者に責任追及するみたいな考え方だ。
だから責任を追及される債務者には責任を追及されるに値する事情、つまり帰責性(故意・過失)が要求されたんだ。
RIE
へぇ、そうなんですね!
真栄里
それが法改正によって債務者に帰責性がなくても債権者は債務不履行解除をすることができるようになったんだ。
旧543条ただし書が新543条にはないからな。
RIE
旧543条は、

履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

とありましたね。
新543条では、逆に債務不履行について債権者に帰責性がある場合、債権者は解除することができない、となっていますね。
大きな方向転換になりますねぇ。
でもどうしてですか?

真栄里
端的に言えば、解除を契約の拘束力から解放するための手段と捉えたんだ。
解除を契約の拘束力からの解放制度と捉える以上、少なくとも、債務者の帰責性を問う理由はない。
債務者の帰責性が不問となったとしても、契約の拘束力から解放するにはどういった不履行がないといけないか、は新たに問題となる。そこで新541条は、

…ただし、…債務の不履行が…軽微であるときは、この限りでない。

と規定している。

RIE
逆に言えば、重大な不履行じゃないと解除することはできませんよ、ということですね。
真栄里
そういうこと。
RIE
で、軽微な不履行かどうかを判断する際は、契約内容が重要になると。「合意原則」がここで関係してくるんですね。
当事者がどういう合意を形成したのかにより、とある不履行が軽微なのか、重大なのかを判断すると。
真栄里
そういうこと。
じゃ、どういった場合が「軽微」な不履行に該当するか?
我々行政書士は具体で勝負だからその判断は重要だぞ。
RIE
先生が常々言っている「予防法務」ですね。
真栄里
そう。
今回の債権法改正によって条文と解釈論の距離は縮まってきた。これによって、法適用の予測可能性が高まったといえる。とはいえ、距離がなくなったわけではないからその距離を我々行政書士は埋めていかなければならないわけだ。
たとえば、ハーレーダビッドソンを新車で買うという契約を例に「軽微」な不履行なのかどうかを検討してみよう。
RIE
ハーレーダビッドソンって、もしかしてお笑い芸人のことですか?
真栄里
面白くないぞ!
アメリカのバイクだと知ってるだろうが。
RIE
ノリツッコミしてくださいよ~~(笑)
「そうそうそう、”伸びしろありますねぇ~”って、それじゅんいちダビッドソンだろ!」
みたいな。
真栄里
一人ノリツッコミしとけば?(笑)
RIE
で、どういう不履行ですか?
真栄里
そうだなぁ、たとえば、車体の横に傷があるハーレーということにしよう。
RIE
それくらいで解除は無理かも。
でも嫌ですね。傷があるのは。
真栄里
解除できるのか、できないのか、どちらなのかは契約の内容次第というのが、新541条の規定だ。
どういう契約内容なら不履行が「軽微」になるのか、契約書を作成する際に注意しないといけないな。
不履行が「軽微」になる場合はどういった契約内容の場合だ?

---次話へ続く---

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