今回の民法改正でこのアドバイスが無意味となってしまった…<行政書士ってナニ?(NEW) 改正相続法編>10
確定した判例を否定する立法をしたんですか?
どうしてですか?
いえ、その前にどう変わったんですか?
被相続人甲が、遺言書に自分の子A(長女)に3つある不動産のうち2つ(ア)と(イ)を「相続させる」と記載していた。
甲が死亡して相続が発生した。
甲の相続人は、AとB(長男)のみで、遺産も3つの不動産だけだったとしよう。
Bには多額の借金があって、甲死亡後Aが相続した(ア)(イ)不動産の登記をする前に、Bの債権者乙がBの法定相続分を差し押さえて先に登記をした。
この場合、Aは(ア)(イ)不動産の単独所有権を登記なくして乙に対抗することができるか?
まずは、確定した判例に基づいて判断すればいいんだよ。
上の例ではどうなる?
もし、Bが自分の法定相続分を乙に譲渡してもその譲渡は無効となるので、Aは乙に譲渡された相続財産を取り戻すことができる(改正前民法1013条)。
ということは、遺言書中に、「相続させる」と記載し、遺言執行者を定めておけば相続開始後に、他の相続人Bの債権者乙が該当財産をBの相続分に対して差し押さえをしたとしてもAは当該財産を取り戻せたわけだ。
だから我々行政書士は、遺言書中に、「相続させる」と記載してもらい、遺言執行者を定めておけば安泰です、とアドバイスをして遺言書の作成を支援していたんだ。
ところが、今回の民法改正でこのアドバイスが無意味となってしまった…。
たしか、899条の2ですね。
(共同相続における権利の承継の対抗要件)
899条の2 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2 略
この規定がこれまでの確定判例の考え方を覆したんだ。
この規定は、法定相続分を超える部分について対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができない、としている。
この規定によれば、上の事例はどうなる?
---次話へ続く---
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