相続制度を否定する考え<行政書士ってナニ? 相続人調査編>
どういった案件での相続人調査ですか?
空き家でナニも利用していないんですから行政とかが勝手に更地にしたりして利用することができるようにすればいいんじゃないですか?
どこかに所有者がいるんだから。
民法にもありましたよね?
(無主物の帰属)
第二百三十九条 (略)
2 所有者のない不動産は、国庫に帰属する。
「所有者のいない」不動産とあるだろ?
ということは、論理的に、所有者がいないかどうかを先に確かめないといかんのだよ。
相続人を探して、誰も相続人がいないとなった場合にその不動産は国庫に帰属することになるんだ。
もうめんどくさいから相続制度なんて無くしちゃえばいいのに!(投げやり)
いや待てよ。相続を否定する学者も世の中にはいるんだよ。
リバタリアニズム(自由至上主義)と呼ばれる自由思想から相続制度を否定する考えがあるんだ。
相続制度を否定??
共産制度の話ですか?それだったらわかりますけど?
だからその財産の相続ということも論理的に出てこない。
ここで言っているのは、私的所有権を認める制度の下で相続を否定する考えのことだ。
つまり、人は、自分の死後に自己所有権を持たないんだ。
相続制度の下では、相続が発生するのは被相続人が死亡した時だ。
ということは、被相続人が死亡した瞬間、遺産に対する被相続人の自己所有権は消滅しているから、その遺産をどうこうする権利が被相続人には何もないことになる。
わかるようなわからないような…
不法行為を勉強するときに学んだはずだが、理屈に従えば、被害者(死者)は、死亡により発生する損害賠償請求権を取得する余地はないんだ。
そうなら被害者の遺族が可哀想でしょ?
続けるぞ。
死亡により発生する損害賠償請求権というのは、死亡によって生じた損害を填補するために被害者に認められる権利だ。それはOKだろ?
第二章 人
第一節 権利能力
第三条 私権の享有は、出生に始まる。
2 (略)
じゃ、権利能力の終期は?
何条ですか?
権利能力は”出生”によって発生し、”死亡”によって消滅するんですね。
死亡により権利能力は消滅するんだから、人は死亡すればもはや何の権利も取得し得ないだろ?
死亡により権利能力が消滅し権利義務の帰属主体が存在しなくなっているんだから。
被害者が死亡したことにより損害賠償請求権が発生するとしても、被害者が死亡した時点では権利主体たる被害者は既に死亡しているんだから。
なんか言葉遊びな気がします…
死亡により発生する損害賠償請求権と同じことだ、被相続人が遺産をどうこうする権利を有しないというのは。
でも、被相続人が遺産についてなんの権利も持たないとしても、相続人には相続権がありますよね?
”潜在的持分”と考えるということは、権利の主体を個人ではなく、家族と考えることになるからだ。「家制度」の復活と見られてもおかしくない。
そういう考え方を戦後の日本は否定して個人主義になっているからな。
遺産は無主物ということになりますけど?
そうしたら遺産として放置されている空き家の問題はすぐに解決ですね!
だが、相続制度を否定する考えが取り入れられるとは到底思えない。
相続制度は古くからあるからだ。
そういえば、コーランにも相続人や相続分の詳しい規定がある(「女人の章」7節、11節)し、旧約聖書にも相続の話がある(「アブラハムは、全財産をイサクに譲った」創世記25章5節)。
親が子を思う気持ち、子が親を思う気持ちと密接に結びついているのが相続制度じゃないかとも思うし。
だから、相続制度はなくならない。
頑張って相続人調査に励んでくれ。
今までの話が無駄だった気が…
荘子は言ってる、
人皆知有用之用而莫知無用之用也
(人は皆有用の用を知るも、無用の用を知るなきなり)
---終---
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沖縄在住の特定行政書士、真栄里です。
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